国際商業の歴史に関する論文を読んでいて、面白い議論を見つけた。それは、「定期市」がどこに立つかによってヨーロッパ国際商業の変遷が分かるというもの。中世における商業の復活がまず定期市から始まったように、定期市の存在はその地方で商業活動が活発になりつつあるバロメータとして機能する。ヨーロッパにおける定期市は、12世紀にフランスのシャンパーニュ地方、17世紀にドイツのライプチヒ、そして19世紀にシベリアのイルクーツクと、東へ東へと移動していった。それはヨーロッパの国際商業が拡大していく過程を示しているといえる。
この議論を見て真っ先に連想されたのが、EUの東方拡大。定期市に見られる国際商業の拡大が、世界システムにおける「周辺」の拡大過程を示すならば、EUの東方拡大は、世界システムにおける「中心」の拡大を示すものではないだろうか、と、ちょっとヨーロッパ中心主義的な説を唱えてみる。
ヘーゲルは歴史は東から西へ動くと述べたが、世界システムは西から東に拡大するのですよ。
さて、ここで問題になるのがロシアで。理論的には、ロシアがEUに加盟することは十分蓋然性があるように見える。しかし、現実のロシアは「ロシア的であること」を強く意識している。チェチェン問題にしても。EUに加盟するということは、結局はロシアを「ヨーロッパ」の末席に加えてもらうということを意味するわけで、それをプライドが許すかどうかだな。実質的には当面ロシアはEUの「半周辺」としてやっていかざるを得ないのは確かなんだが。