6.11新宿中央公園を中心とする経緯の確認

 なぜ針谷氏が登壇すべきでなかったのかについては会のブログ内において何度も詳しく明快に書いてあるので、ここで繰り返し書くことはしません。わかるまで熟読してください。
 ただし、問題意識を共有するしない以前に、経緯の認識が「なんでそうなるの!?」というものばかりで、非生産的な議論を生んでいる原因の一端はそこにあると思うので、関係者のひとりとして経緯にたいする見解をちゃんと書いておきます。
 
 経緯に対する典型的なまちがいは、次のブログにあらわれています。

ヘイトスピーチに反対する会の行動を支持しません
http://d.hatena.ne.jp/fut573/20110619/1308487730

 まず、常野さんの発言もぼくの発言も、会としての声明ではなく、6/9の時点の個人的な声明です。これに問題があると感じたならば、常野あるいは北守を批判すればいい話であって、会とこれらの発言を直接結びつけるのは意味不明です。会の公式声明は別にちゃんと出しているのであって、「ヘイトスピーチに反対する会」を問題にしているのに、なぜそちらを参照しないのでしょうか。
 ぼくがこの事実を知ったのは確か木曜の夜であって、いくつかtwitter上でコメントをしたあと、反ヘイト会のMLに行動の提起をしました。主催者に公開質問を行おうとしたのだけれど、どうせやるなら会としてやったほうが意味があると思ったからです。ま、そこで公開質問だけじゃなくて直接行動もしたいという意見が出たりで、なんやかんや調整した結果、公式の声明*1が出たのは金曜の夜です。
 針谷氏の降板がHP上で発表されたのはそれから30分後くらいだったでしょうか。この時間内で主催者の方針がかわるとはちょっと考えられないので、針谷氏の降板は反ヘイト会が声明を出す前にすでに決定していたと考えるのが妥当です。
 すでに明らかになっているように、針谷氏の登壇を問題視していたのは反ヘイト会のひとたちだけではありませんでした。たとえば園良太さんは主催の一人として反対したことを表明しています。
http://twitter.com/#!/ryota1981/status/81574868679794688
この間、園さんから会に対して何らかの意見があったり、逆に会として彼に何かを求めた事実はもちろんありません。
 また、@ANAFUZZ 氏のツイートをみると、反ヘイト会に必ずしも同調しないメンバーからも今回の件に関して異論が続出していたことがわかります*2。ネットで公的な声明がなくても、主催にスタッフとして関わっていた友人たちに話を聞くと一様に「寝耳に水だった」「会議にかけられていたら反対していた」と述べています。また、針谷氏降板が決定したあとになってはじめて、この事件を知った人さえいます。
 針谷氏降板の理由は、主催者が沈黙している現在(6/20)において確かなことは分かりません。しかし、形式的にさえ合意形成がなされず、HP上でやおら発表されたことに内外から反発が出る中で、針谷氏登壇を決定したひとたちが(おそらく思いつきだったのでしょう)何ら説得力のある説明ができず、降板に至ったと考えるのが妥当でしょう。
 いくつかデモ主催にかかわり、そのプロセスや議論を経験してきた立場からすれば、今回のことはちょっとありえない事態といわざるをえません。デモの事前集会で誰をよぶかはロフトの平野悠氏に丸投げだったと聞いていますが、その平野氏はこんなことを言っています。

http://twitter.com/#!/yu_hirano/status/81299925501095936
今回の一連のデモの計画はヘイスピの主催でもなんでもない。「ロフトと素人の乱」の共同企画なのだ。

反へイトの会ははじめから会として関わっていた事実はないので主催じゃないのは当然ですが、”「ロフトと素人の乱」の共同企画”とはどういうことでしょうか。HPを見ると*3素人の乱の名前はあるものの、”「ロフトと素人の乱」の共同企画”であることについていっさい説明されていません。わたしたちの友人も含め準備段階から主催にかかわっていた人で、「ロフトと素人の乱」両方の関係者ではないひとはたくさんいました。デモの主催者とはふつう準備段階から会議に出席し、スタッフとして関わっていた人をさすのだと思います。まして、ロフトの平野氏のツイートを見ると、彼が事前・事後の会議に出席していたようには思えません。
 デモを一緒につくっていく仲間を軽視し、”「ロフトと素人の乱」の共同企画”だからと唐突に決定されたことに対する内部からの反発を、”左翼が任務を放棄した”と言ってしまうような人物に*4、集会で誰を登壇させるかということを一任させてしまったことが、まずもって問題であったということ。今回の事態をまねいた「直接的な」理由は、そこにつきると思います。こんなのはオートノミーでもシアトル以降でもなく、ただ功名心に走ったバカがいたということにすぎません。
 
 さて、針谷氏降板を知ったぼくは(問題視しておきながら)ちょっとびっくりしましたが、まあそりゃ内部から反発がでないわけがないよなあと思いつつ、まずはこの決定を評価し、当日どうするか改めて話し合いました。もともと、針谷氏が登壇したばあいは離れたところでアピールしつつビラまきをし、降板したばあいはふつうにデモに参加しようってことになっていました。で、今回は後者の立場で行ったわけですが(友人の話も聞きたかったし)、そこで起こったことは会の報告にあるとおりです。まあ、先ほど紹介したブログに反論しておけば、まず日の丸君の登壇自体がサプライズだったこと、そして、会が批判されたことに対して抗議したのではなく、報告にもあるとおり、日の丸を掲げて壇上にあがったことに対して、それからまさに「俺は本当を言うと日の丸も君が代も反対なんだけど、今回だけは日の丸を掲げさせてもらう。そんなふざけた話があるか」というふざけたことを言っていたことに対して抗議したわけです。普段は日の丸に反対ってことは日の丸がいかに悪いかを知っているわけで、にもかかわらず(自分自身のみの意志で)掲げたわけですから、より問題があると言わざるをえません。
 集会がおわったあとは、それぞれ次の予定があるということが分かり、会(有志)としての行動はとりあえずそこで終了しました。数人でデモと並行しつつアルタ前まで向かい、5時くらいにはそれぞれ別の場所に行きました。
 
 公開質問および当日の行動について個人的な見解を書いておくと、この事態を問題化し、直接行動をおこなったことに対していっさい反省はありませんが、当日行ったことについては、柏崎さんのアピールがあったとはいえyoutubeでみるとやはり分かりにくかったと思います*5。サプライズに対するサプライズだったので、ということもありますが、せめてビラは持っていくべきでした。そういう反省はあります。
 大同団結の論理が、自称右翼、自称左翼、自称ノンポリに関係なく、「日本人・男性・健常者」のマチズモによって駆動されているなかで、つまりマジョリティが足を踏み続けたまま「危機」を根拠に足を踏みつけられたマイノリティを強引に包摂していくなかで、それに対する異議申し立てを、また別のマチズモにならないかたちでどう構成していけるのか。そこにおける直接行動や論理の立て方はどのようなものか、そういうことを話あえるならば、ぜひやりたいです。
 ただし、議論は出尽くしているのに、この期に及んでなお針谷氏の登壇そのものが問題と思えない人に対しては、もうどうしようもない気しかしませんがね。

*1:正確には会の声明ではなく有志の声明です。

*2:たとえばhttp://twitter.com/#!/ANAFUZZ/status/80113680599093250

*3:http://611shinjuku.tumblr.com/

*4:スタッフが足りなかったら自分でやればいいことです。平野さんが自ら、デモ隊と車の間に入ってこようとする警察に対して抗議をしてください。

*5:ただまあ、分かりにくさを問題にするなら、スタッフでもないのに自警団っぽくふるまって「キチ○イ」を連呼していたひととか、日の丸君や、彼を煽って壇上にあげた鈴木邦男についても問題にすべきだと思いますけどね!