「つくる会」歴史教科書 都中高一貫校で採択

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040827-00000002-san-soci
最近使ってないのでこのカテゴリーにしてみた。
うーむ。とりあえず、歴研でも貼っとくか。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/rekiken/archives/kyokasho1.html
http://wwwsoc.nii.ac.jp/rekiken/archives/kyokasho2.html
http://wwwsoc.nii.ac.jp/rekiken/archives/kyokasho3.html
3年前くらいに、授業の課題で「つくる会」教科書と他社の教科書を比較していた友人に、最近の歴史教科書を見せてもらったことがある。一社どこだったか忘れたが、各章のアオリが必ず「立ち上がる民衆」的なフォーマットで書かれているのがあって、さすがに笑った記憶がある。でもそれ以外は結構良くできていて、感心した。
で、この教科書はというと、はっきり言って他の教科書よりも詳しく書かれている。でもそれはいわゆる歴史マニア的な詳しさなんだよね。新選組の隊士の名前は全員言えるけど、明治維新という事件を世界史の中で大局的に考察することは出来ない、みたいな、そういう子供を育てようとしている感じ。たとえるならジュヴナイル用の「ガリバー旅行記」。"長い18世紀"のイギリス社会風刺を全カットして、軍船引っ張るシーンに特化してみました、という。自国の歴史「肯定」*1イデオロギーはどこの国にもあります。ドイツにだってあるし、フランスにだってある。*2まあそういうのもきっちりと批判しておかなければならないのだけれど、それよりも問題なのは、歴史を狭義の「物語」に落とし込んでしまう手法ではないかと思う。歴史というのは、いろいろなものがいろいろなかたちで複雑に絡み合っている集積物なわけで、司馬遼太郎ばりの「偉人伝」は、少なくとも歴史学的ではない。織田信長の人生は確かに面白いが、それを知ったところで次に繋がってこない。「一行書くごとに、どれだけ身を削る思いをしていることか」と他社の教科書を執筆している先生が言っていたことだが、そのキリキリした思いがまったく伝わってこない「つくる会」教科書ははっきり言ってクソだと思う。

*1:あの人達は、「肯定」と「賛美」を混同しているんじゃないだろうか。

*2:「ヴィシー政府のナチス協力を非難するのは誤りである。当時としてはあれは最善の策であった。」「アルジェリアにおける植民地支配で、フランスはいいこともした。」という、まるで2ちゃんねるのネタのような歴史観を唱える人が、大真面目に存在する。