飛浩隆『象られた力』(ハヤカワJA)

中篇2本に短編2本。扱っているテーマは、大まかに言えば、変容(感覚的な変容も含む)していく世界の中で表出する人間の美しさと残酷さ、だろうか。
期待が大きすぎたせいもあるが、いまいちだった。正直言えば読みにくかった。人によるんだろうが、自分にとっては、感覚的に変容していく世界の描写が、何か割れた鏡に映る風景のように、一つ一つは鋭く、明瞭なのだが、最終的にはそれぞれが断片化されたイメージとしてしか掴めてこないので、全体的に何がおこっているのかを理解するのが難しかった。ていうか、特異な世界で特異な変容を起こしても分かりにくいだろう、と思った。事実、唯一舞台が現代の「デュオ」は面白く読めた。