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野村美月『“文学少女”と死にたがりの道化』(ファミ通文庫)

“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫)作者: 野村美月,竹岡美穂出版社/メーカー: エンターブレイン発売日: 2006/04/28メディア: 文庫購入: 20人 クリック: 312回この商品を含むブログ (602件) を見る遠子先輩怖い。なんでかっていうと、これ、裏テー…

天野こずえ『ARIA』7巻

なんか急速に藍華:斎藤千和、アリス:広橋涼というキャストにマッチしてしまっていた。声優サッカーで言えば、日本のデルピエロであるところの千和と、日本のファンデルファールトであるところの広橋の起用とはすなわち、完成された個人技の演舞を意味する…

飛浩隆『象られた力』(ハヤカワJA)

中篇2本に短編2本。扱っているテーマは、大まかに言えば、変容(感覚的な変容も含む)していく世界の中で表出する人間の美しさと残酷さ、だろうか。 期待が大きすぎたせいもあるが、いまいちだった。正直言えば読みにくかった。人によるんだろうが、自分にとっ…

クリストファー・プリースト『奇術師』(ハヤカワFT)

FTの新刊なんてもしかしたら初めて買ったかも。 物語の謎を、セカイの構造を変えてしまうことによって解決するという、いかにもプリーストらしい話。いや、ほめているんですよ? 帯の煽り文とか裏表紙の解説とか、本気でつまんなそうだし、実際第一章とか死…

マイク・レズニック『アイヴォリー』ハヤカワ文庫

人の信念というものは膨大な事実を蓄積することでは決まらず、その事実の中で人が何を忘れ、何を覚えているかで決まるとすれば、マンダカとそのほかの人類とに本質的な差異は無い。マンダカが少し変わった信念を信じてしまっただけだ。 むしろ圧倒的大量の事…

リュシアン・フェーヴル「フランス・ルネサンスの文明」

「実証的だが無味乾燥な社会史は、子供にとって興味を引くものではないので、歴史教育は血沸き肉踊るような『歴史物語』を…」といった言説は、明らかに怠慢でしかないと思える本。優れた語り手がいれば、その実証性を崩さなくても歴史は十分面白い。 リュシ…

林健太郎「ドイツの統一と戦争」『林健太郎著作集3』

ウィーン体制からドイツ帝国成立までを、政治史中心に追っていく。多面的な視点から、簡潔にまとめられた良い通史だと思う。ただ、勿論様々な留保は付けているのだけど、総論としてはドイツ統一自体は肯定すべきものであるとみなされているのに多少違和感が…

「13」古川日出男

メモ程度の感想。 第一部で紡がれた物語−響一の、ローミの、ウライネの、13の−を、第二部で一度構造的に分節・解体し、再編成することで、物語内物語−それぞれの視点−パースペクティヴが「発見」される。色盲でしか見えない世界とは、その象徴だろう。「沈黙…

「サウンドトラック」古川日出男

イデオロギー闘争の歴史は、「アラビアの夜の種族」をもって終焉した。ゆえに、もはや「沈黙/アビシニアン」で見られたような、「正史/個人史」の対立構造は存在しない。あらゆるイデオロギーが、ある「歴史的偶有性」に依拠する以外には価値を失った世界で…