阿片窟で初音ミクを愛でる阿片中毒者たち

なんとなくアップしてみた。
http://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20071025の続きです。
大分日がたってしまって、もう初音ミク論も下火っぽいのですが、前の日記にいろいろとコメントなどを頂きましたので、答えなければいけないと思いました。なんかセンテンスごとにコメントがついてるのですけども、一応アレは元ネタに準拠して(?)、全体でひとまとまりなので、細切れに聞かれても答えるのが難しかったりするのですが、うーむ。
まあ、そもそもなぜアレを書かなければいけなかったか、という理由を説明すると、つまり、初音ミクに対して、「機械のヴォーカルなんてどう考えても人間に対する最大の疎外だろ」という、発せられて当然の問いが、あまりにも無視されすぎている、というのがあったからです。まあ恐らく、「時代の最先端をリードする我々オタク様に投げかけるには、あまりにも古すぎる問いだ」という理由によって。別に前衛ぶるのは結構なことですが、流石にいかがなものかと思わざるを得ないですね。ヴォーカロイドを含めた複製技術の発展が、我々の文化・社会に対して大きな寄与をする可能性というのは当然あるわけですが、それは当然諸刃の剣なのであって、新しい技術に萌えていればそれで良いのだで済まされることではないし、であるにもかかわらず初音ミクを扱う人々がそうした人々ばかりだとすればそれはもう正気ですか?とケンコバよろしく言う他は無いのです。見てるともう信者だよね。宗教か。マルクスによれば宗教は阿片らしいので初音ミクは阿片か。
まあ少し具体的に論じましょう。そもそも初音ミクという現象は新しいのか?新しいですよ。人格と不可分のDTM装置として。たとえば、ミクユーザーは、「初音ミクでつくった音楽」とは言わない。「初音ミクに歌わせてみた」「初音ミクを調教した」などと言う。これを単なるレトリックとして捉えるというのは、あまりにも初音ミクという現象にたいしてナイーブすぎるでしょう。たとえば、今までのDTM装置において、こうした言い方がされることは恐らくあまり無かったか、あっても人口に膾炙しないジャーゴンでは無かったでしょうか。
で、これの何が問題かというとまさしく大衆の心性の腐敗に絡めてであります。普通に考えれば初音ミクDTM装置なのだから、「初音ミクでつくった」と言えば事足りる。しかしなぜ「初音ミクに歌わせてみた」と言わなければならなかったのか。「初音ミクでつくった」というのは要するに「製作者は俺です」って言っているわけ。つまり、あくまでもそこには製作者しかいない。でも、「初音ミクに歌わせてみた」の場合、そこには「初音ミク」という表現者が何故か登場しているわけです。初音ミクという仮象の人格をわざわざつくってまで「歌わせてみた」って言わなければならない理由って、はっきり言えば大衆的な支配欲・征服欲を満たすため以外考えられないのですな。もしくは阿片吸ってるか。「歌わせてみた」はまだ良いけど、「調教した」なんてまさにもうそれでしょう。たとえばまああなたが同人音楽の歌姫だと思いねえ。で、自分の依頼者が、自分にヴォーカルを依頼する一方で、「初音ミクを調教しました」とかいってニコ動とかに音楽アップしていたと思いねえ。軽く引かねえか?ああこの人ヴォーカルについてそういう風に思ってたんだって。機械だから良いでしょとか言われても機械ならそれこそ「初音ミクでつくった」って言えば良いんで、にもかかわらずそういう発言をするってことは、やっぱりお前そういうのが好きなんでしょ支配したいんでしょって言われても仕方が無いですよね。
まあ、なんかそういう人の醜い心性を浮き彫りにするという点では初音ミクは良かったかもしれない。あんまり関係無いけど、初音ミク支持の意見で「ヴォーカルなんて所詮楽器だし」ていうのがあって、それに賛同コメントがいっぱいついているのを見て、ふーんて思った。ふーんて。
http://d.hatena.ne.jp/y_arim/20071108/1194541201
そういえば、ちょうどタイムリーにも良いエントリがありました。ここの引用部分の分析ですが、まあこれが事実かどうかはわからないけど、事実だったら本当に酷い話ですよね。だって、マネジメントが楽だからという理由で、人間の代わりにヴォーカロイド使うんですよ?ヴォーカロイドで無ければいけないのではなくて、人間の代わりにヴォーカロイド。しかも理由がマネジメントが楽だから!趣味だからって言うかもしれないけど、そういう安直な理由での趣味の初音ミクが、まあブームがあるとはいえある程度アーティスティクな同人音楽ランキングを独占している時点で、劣悪なものは淘汰されてそこから良いものが出現するのだみたいな楽観的な未来志向は正気ですかと思うのですけどね。ところで皆何故か凄い勢いで市場原理を信じているのは何故だろう。よくわかんない。ちなみにこのまま初音ミクのブームが続いた場合、同人音楽業界は一握りの上手な歌姫と圧倒的多数のヴォーカロイドという構図になると思うけど、それでいいのかな。それで良い(新たな文化!新たな表現!)って言うならまあいいや。
じゃあお前は初音ミクが人間と比較されたり、表現者として扱われたりしなければいいのか?って話になると思うんだけど、そう出来るなら良いですよ。でも不可能でしょう。そんなこと。初音ミクが単なるDTM装置として売り出されたとして、ここまでのブームになったとも思えないし、ユーザーの間でミクに仮象の人格を与えなかったとも思えない。根拠は大多数のユーザーが「ミクに歌わせた」「ミクを調教した」と言っていることです。自分はミクを単なるDTM装置そしてしか認識していないという弁解はここで通用しなくなります。なに、ニコニコユーザーにこびてるだけですか。つまり、製作者の創作意欲に影響を与える大衆という奴ですね。
なんだろう。ヴォーカロイドの未来を信じているなら、むしろミクのような人格を付与されたヴォーカロイド=阿片は徹底的に批判するというのが良心的だと思うけどなあ。