キージンガーなのかメルケルなのか

小沢ショック問題は、大阪市長選で民主党が勝利したことでもう旬が過ぎた感は無きにしもあらずだが、小沢一郎の構想する大連立の議論において、しばしばドイツの例が比較対象として持ち出されることがある。しかし、その「ドイツの例」というのが、肯定派と否定派で違っている気がするのだ。肯定派はキージンガー政権においてSPDが実績をつくり、次のブラント政権に繋がったという歴史的事実をもって大連立の意義を強調する(しかしそれを中川秀直のような自民党議員が言うのはどうかと思うのだが)。他方で否定する側はどうも、メルケル政権の例をもって、事情が全然違うと主張することが多い気がする。これかみ合ってないんじゃないかなあ。メルケル政権が問題になっているならば、確かに比例代表並立制と併用制の違いをもって、条件が違うと主張するのは理解できるのだが、キージンガーだとすればそれは手順の問題なのだから、どちらにせよ近い将来に起こりうる次の選挙では別々に戦えばすむ話、ということになってしまう。
確かにキージーンガー政権においてブラントがとった戦略を、小沢一郎も考えていたとすれば、大連立は正しいと小沢一郎が今でも主張しているのは理解できる気がする。問題は、小沢はブラントでは無く、民主党SPDでは無いということだ。現実的に今の民主党自民党が大連立を組んだとするともう私のような消極的民主党支持者としては危なっかしくて見ていられなくなるだろうし(経済右派が結集して政界再編なんてことになったら目も当てられない)、さらに問題なのは、民主党を支持している潔癖主義な人々は、次の選挙において民主党に投票しないだろう、ということだ。キージンガー大連立は非常事態法を制定したことで左の人からは評判が悪かったのだけど、それでも次の選挙においてSPDは勝利し、ブラント政権に繋がった。こういう投票行動は、未遂に終わった小沢ショックでさえ「民主党には失望したもう民主党には投票しない第3極を」といきまいている人々には出来ないんだろうなあと思う。まあ民主党SPDでは無いってのも分かるんだが、それでも今度の参議院選挙で当選した民主党議員の大半が護憲であり、自民党議員の大半が改憲であることを考えると、まだ左派は民主党でいいんじゃねえかなという気がするぞ。
まあ、世論調査はどうも民主党はよく持ちこたえたねナベツネ死ねばいいのにでFAっぽいのでまあいいや。