鳩山だからこそ

 別に改憲派鳩山由紀夫を応援する義理は何もないのですが、党首が鳩山由紀夫になったことで民主党政権交代は遠のいたという、何を根拠に言ってるのかわからない言説については、選挙特番大好きなわたくしとしては文句を言っておきたいと思います。
 事実は、民主党政権交代を確実なものにするためには、よほどのことが無い限り鳩山を選択するのが最善であったということです。なるほど、確かに岡田のほうが直近の「民意」を獲得することはできたでしょう。しかし、そもそも民主党は「民意」の支持をあまり必要としない政党なのです。

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もちろん投票率の違いも見なければいけませんが、ここ数回の選挙においては一見して分かるとおり基礎票においては民主党自民党を上回っており、自民党のほうがいわゆる「風」だのの選挙をしているわけです。小選挙区の投票傾向はもちろんこれとは若干異なるでしょうが、まあ似たようなものです。そして郵政のような突風はさすがに今回は吹かないでしょう。とするならば、重要なのは「風」を得ることよりもむしろその配分、つまり票割りや他党との選挙協力であって、それにふさわしいのは単独政権にこだわる岡田よりも小沢路線の選挙戦術を継続する鳩山であることになります。
 さらに、西松以降の世論調査では民主党自民党の支持率はほぼ拮抗状態にありますが、そもそも拮抗しているという時点ですでに民主党は圧倒的に有利なのです。

http://www41.atwiki.jp/giinsenkyo/pages/15.html
http://www41.atwiki.jp/giinsenkyo/pages/18.html

これらを見ればわかるとおり、あの2007年参議院選挙直前でさえ、政権の支持率は30%あり、また政党支持率でいえば民主党自民党にトリプルスコアをつけられていました。ところが、結果は周知のとおり民主党の圧勝であったのです。その理由は、民主党自体は支持していなくても自民党はイヤ、政府はイヤという潜在的野党支持者の受け皿に民主党がなっていることなどがありますが、ともかく西松事件のようなことがあると民主党の支持率はヒトケタまで落ち込むというのが常識であって、下がっても平均して20%代を維持しているというのは、今まででは考えられなかったことです。小沢辞任と鳩山就任で民主党の支持が回復したことが驚きであるという論調がありますが、論理的に考えればこれは当然の話で、なぜ不思議がるのかわかりません。つまり、不信感をもたれていたのは小沢一郎個人にたいしてであって、小沢一郎の路線、つまり2007年参議院選挙の路線が否定されたことは一度だってなかったからです。逆にいえば、麻生降ろしが成功したとしても、小泉ブームのようなトレンドはもはや回復しないでしょう。あのときは、確かに森の支持率はヒトケタでしたが、自民党の支持率は一貫して30〜40%あったからです。内閣支持率自民党支持率が拮抗するような、現在の状況とは違うのです。
 さらに、自民党の地方組織の崩壊や地方自治体選挙における民主党の躍進は(まあ千葉とか大阪とかポピュリズム選挙にはあいかわらず弱いですが)、民主党好材料以外のものを提供しません。「風」しだいで大きく振れてしまう大都市圏を別にすれば、民主党の都市部での優位に変化は無いのに加え、郡部においても地盤を確保し始めたということです。もちろん、こうした地盤固めに対して小沢一郎の選挙戦術が大きな影響を与えていることは言うまでもありません。
 以上のことから、民主党は普通に選挙をやれば勝てるのであり、普通に選挙できるのは岡田ではなく鳩山であったわけです。さらにいえば、民主党自民党に普通の選挙をやらせたいのであって、麻生を降ろして奇策を行うきっかけをつくる岡田を選出するのは賢明ではありませんでした。そこにおいて「民意」は無視されたわけですが、まあ「民意」の答えが「俺たちの麻生」だったりするわけですから、そんなものは無視されても仕方がないのではないでしょうかね。