「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を読む3

第3章 近世の日本>1.戦国時代から天下統一へ>25ヨーロッパ人の世界進出

両国は,アジアにおけるキリスト教の布教と交易を求めて…

確かに宣教師はヨーロッパ外におけるキリスト教の布教に燃えてたりしましたが、「国としては」やはり交易目的でしょう。どうもこの教科書、「主語」が適当すぎるんだよなあ。

インドや日本を目指すのならば,当然,東の陸路をたどるはずだが…

以降の文章。
初期中世と盛期中世を混同してます。確かに初期中世においてはムスリム勢力の地中海への進出によって、西欧は「孤立した地域」としてあった(ブローデル)。しかし、ノルマン人の進出や十字軍、さらにはイタリア都市国家の発展によって、中世盛期には地中海の制海権は、オスマン・トルコが出てくるまではほぼキリスト教勢力側にあったと言ってよいでしょう。「約800年間,南と東へ進出する可能性を失っていた」って、南は確かにそうかもしれないが、東への拡大はコンスタントに行っていますよ?さらに、十字軍などによる東西交流・貿易の発展には全く触れないって、結局「のちにヨーロッパ人は,この時代の世界進出を「大航海時代」とよんで自画自賛したが,実際には壁のように立ちはだかるイスラム教徒の力への恐怖を前提としていた。」ってことを言いたいだけなんでしょうな。なんだかなあ。西回りのアジア航路の開拓が必要な理由なんて、中学レベルでは「イタリア諸都市による東方貿易の独占と、イスラム諸勢力を通すことでの中間マージンの発生」で済む話です。なんでそうまでして「文明の衝突」を煽りたいんでしょうか。この教科書は。
まあ、この問題は「つくる会」だけを責めるわけにもいかないのですが。ルネサンスや十字軍を削るような今の指導要領では、ヨーロッパの世界進出についてきちんと教えられないのも仕方ないのかも。
<参考>
http://www.osaka-shoseki.co.jp/kyoka/r_junior14_txt/r14.html
ていうか、普通にルネサンス教えてるのね。

ヨーロッパでは,アジア産のこしょう・香料や絹織物が,イタリア商人によって輸入され,高い値段で売られていました。この利益に目をつけた人々は,スペインやポルトガルの国王の援助を受け,直接アジアに行ける航路を求めて,探検に乗り出しました。

明瞭かつ完結でよろしい。