「歴史意識の欠如」

三歳
私に過去はなかった

五歳
私の過去は昨日まで

七歳
私の過去はちょんまげまで

十一歳
私の過去は恐竜まで

十四歳
私の過去は教科書どおり

十六歳
私は過去の無限をこわごわみつめ

十八歳
私は時の何かを知らない

谷川俊太郎「生長」

中学生までは、日本は世界の中で最も複雑な歴史を持った国だと単純に信じていた。高校になって初めて歴史の無限に気づいた。外国の高校生は、日本の歴史についてどれくらい知っているのだろう?と。そして、たとえ大学で歴史を専攻しているといっても、専門の地域以外の歴史については、多分ある側面ではその国の高校生より知らない。もしかしたら死ぬまで知らないままなのかもしれない。だからせめて、想像力だけは持っておきたいと思う。