「経済的・社会的・政治的条件」と「人間の情熱」
E・H・カーと、アイザイア・バーリンが論争やってるから読めばいいと思います。*1
それだけではさすがにあんまりなので、少し別の角度からみてみることにします。「経済的・社会的・政治的条件」に並ぶような、歴史を動かす原動力としての「人々の想い・精神の働き」のことを、歴史学(特にアナール派歴史学)では「心性(マンタリテ)」といいます。まあこれもややこしい概念なのですが、少なくとも「キリスト教」みたいなものでバッサリやれるものではないということは確かです。別にこの概念は、「経済的・社会的・政治的条件」と対立するものではなかったりする。というか「経済的条件と政治的条件を一緒にしたらまずいんで、もう少し学問的な整理が必要です。
これらは3つのグループに分けることができます。
1「政治的条件」2「社会的条件・経済的条件」3「心性」
それぞれの組は、ブローデルのいう「3つの波動」にそれぞれ対応します。
1=「短期波動」(変化のスパンが一番短い)、2=「中期波動」、3=「長期波動」(変化のスパンが一番長い)
19世紀歴史学は、1ばかりを中心に扱ってきた。それに対して、2や3を重視する動きが19世紀末から20世紀初頭にかけて現れてくる。
1と2と3はもちろん相互に媒介するものなんだけど、それ以上の関係となると、正直難しくて一概には言えない。ブローデルは2を「局面状況」といって重視したけど、そうじゃなくて実は3が一番大事なんだという人もいる。また、古い時代ならともかく、現代ではこの3つの区分は成立しづらいのではないかという意見もある。あるいは手法的に2、3から1を解明していこうとする研究や、最近ではその逆で1から2,3、に降りていく研究も出てきている。
*1:E・H・カー「歴史とは何か」岩波新書、アイザイア・バーリン『歴史の必然性』「自由論」みすず書房