ドイツ準決勝敗退について

 もちろんワールドカップの話である。大会が始まる前は、せいぜいベスト4がいいところ…と思っていたので結果は順当なのだが、大会に入ったあとの好調で優勝いけるかも!となまじ期待が膨らんだせいで、まったく残念でたまらない。まあ、負けに不思議の負けなしなので何が問題だったのかを分析する。
 まず、戦い方が間違っていたとは思わない。前線や中盤からボール奪取しに行くことはもちろん出来たであろうし、それを行っていればあれだけスペインに支配されることは無かったであろう。しかし、それは体力の著しい消耗を招くことも必然である。もし前半から積極的にいって点が取れればいいが、もし点が取れなかった場合、スペインの実力を考えると疲労によって後半に必ず失点するだろう。これは一種の賭けであって、今のところその賭けに勝ったのはヒッツフェルトだけである。
 だから、その賭けを選択せずに、中盤を支配されても最後の部分でやらせない、そして一発のカウンターを狙う、という戦法は確かに合理的であり、むしろ後半になればなるほどドイツの勝つ確率が高まったはずである。ゆえに、失点は不運というしかない。あの位置からのプジョルのヘディングシュートなんて、たとえドフリーであっても10回に1回成功すればマシなほうである。そしてそれ以外はほぼ完璧に相手の崩しをさせなかったのだから、ただただツキがなかったといえよう。
 問題はそれ以前の時間帯で先制点が決められなかったことにあるだろう。これについてはいくつか指摘できることはあって、まずひとつめはもちろんミュラーの不在が大きかった、ということである。トロコフスキーが代役として出場したが、残念ながら彼はその期待にはこたえられなかった。ドイツの攻撃の鍵は今や、この20歳の新鋭にかかっていることが浮き彫りとなったのである。
 また、左サイドに関していえば、これはペドロを褒めるしかない。スペインの攻撃の足かせとなっていたトーレスがはずれ、彼が入ることによってスペインの右サイドはセルヒオ・ラモス―ペドロ―ビジャという強力なラインが完成しており、そのためポドルスキーが完全に守備に追われることになってしまった。ボアテングがよくなかったと思わないが、流石にこの攻撃陣を彼一人で抑えるのは不可能である。つまりドイツはカウンターの鍵となる両翼を封じられており、そのためかなり無理な中央突破をずっと強いられていたのであった。
 今回の敗戦から何を学べるか、ということは実はあまり無く、単にドイツの個々の選手の力がまだ不足していたということを明らかにしただけである。完璧な個人技では完璧な組織は崩せないが、完璧な組織同士の戦いでは個の力が重要となる。ミュラーがいればもっと戦えたとは思うが、それだけでは難しい。エジルがいかに賞賛されていようと、まだまだ世界トップクラスの個人能力はないとみなされている。少なくともスペインのDFラインの高さを見ればそれは一目瞭然である。スペインのDFラインを押し下げられるような脅威を若い選手たちが与えられるようになれば、スペインに勝つことは不可能ではないし、ドイツ第三の黄金時代は、そのときになって初めて訪れるだろう。